受診遅れで58人死亡 無保険や自己負担できず

共同通信社 41() 配信

 全日本民主医療機関連合会(民医連)は29日、経済的事情で国民健康保険(国保)の保険料が払えずに「無保険」状態になったり、保険証を持っていても医療費の窓口負担が払えなかったりして受診が遅れ、死亡した人が2012年に25都道府県で58人に上ったとの調査結果を発表した。

 民医連は、加盟する病院や診療所の計657施設に、経済的事情で受診が遅れて12年に亡くなった人の事例の報告を求め、回答をまとめた。

 受診遅れで死亡した人のうち無保険の人は22人。国保の保険料滞納で有効期間が短くなる「短期保険証」が13人、さらに滞納が続き保険証を返して医療費全額をいったん払わなければならない「資格証明書」が4人。残る19人は、保険証はあっても医療費が払えずに受診を控えていた。死因の7割近くはがんだった。

 58人の約7割は50~60代の男性。職業別では無職が25人、非正規労働者が17人いた。

 都道府県別では福岡の7人が最多。北海道、埼玉が各5人、青森、東京、宮崎が各4人だった。

 

地域別の医師数制限を求める、第7回社会保障制度改革国民会議

m3.com編集部 328() 配信

 社会保障制度改革国民会議(会長:清家篤・慶応義塾長)の第7回が327日、首相官邸で開かれた。四病院団体協議会などが意見を表明した後の議論で、出席者からは地域ごとの医師数を制限する意見が出たほか、現在検討中の新専門医制度が「医師の偏在是正」につながる可能性を期待する声も聞かれた。出席予定だった日本医師会の横倉義武会長は欠席した。

 27日の会議は、「医療・介護サービス提供者との議論」(清家会長)が目的で、四病協のほかに、日本歯科医師会や日本薬剤師会、日本看護協会の代表者も出席した。四病協の代表として、日本病院会会長の堺常雄氏が医療提供体制の考え方を説明した。勤務医の平均勤務時間が、週当たり63.3時間であるなどのデータを提示し、「(適正な勤務時間を40.0時間とすると)勤務医は現状の1.6倍の約25.6万人必要だが、現実的でない」と発言。予防、外来、入院、在宅・介護の一連の流れの中で、入院医療を考える必要性を指摘した。地域ごとに必要な医療体制を整備するに当たり、「(今までのような)診療報酬のみによる経済誘導だけでは無理がある」として、医療法の改正が必要になる可能性もあるとの認識を示した。医師の偏在については、「診療科・地域偏在は実際にある」と述べた。

 

 

「医学部新設で医療崩壊は決定的に」、中川副会長

医師の絶対数確保には一定のメド付く

201341日 橋本佳子(m3.com編集長)

 

 日本医師会副会長の中川俊男氏は、331日の第128回日本医師会定例代議員会で、「医師の絶対数の確保には、一定のメドが立っている」との見解を示した上で、「自民党の『東北地方に医学部の新設を推進する議員議連』が医学部施設の動きを加速している。しかし、東日本大震災の被災地である東北3県、特に沿岸部では地域医療の確保が極めて厳しい状況。医学部新設によって医師が教員として引き抜かれることになれば、医療再建どころか、地域の医師不足がさらに深刻化して、地域医療の崩壊が決定的になる」と強調、改めて医学部新設に反対する姿勢を示した。

 その上で中川氏は、「東北地方は、東日本大震災以前から、医師不足が顕著だった。他の地域でも、医師の偏在による医師不足が深刻化している。まず被災地から、そして日本の地域医療の全体の問題として、直ちにできることからやっていくべき。それは、医師不足の不安を持つ地域の住民が理解し、『これで医師不足が解決できる』と納得できるものでなくてはならない」と強調。


日本医師会副会長の中川俊男氏は、「被災地の医療現場からこれだけ反対の声が上がっているのに、なぜ医学部を新設しようとする動きが止まることがないのか」と疑問を呈した。

 被災地対策については、「復興のためというのであれば、なぜ地域医療再生基金を拡充し、スピーディーで柔軟な対応ができないのか。なぜ政治力を持って、被災地に医師を派遣することができないのか。既に被災地の大学医学部自らが、医師の教育や派遣を通じて、地域医療支援に力を入れ始めている。国はこうした動きを財政面を含めて強力に後押しすべき」。中川氏はこう述べ、東北大学などの取り組みを支援する必要性を指摘した(『オールジャパンの支援・参加を期待 - 山本雅之・東北メディカル・メガバンク機構機構長に聞く』などを参照)。

 さらに中川氏は、政治主導で被災地の医学部に「医療復興講座」を新設し、医師の受け皿を作ること、日医が「医師養成についての日本医師会の提案」の第3版で提案している「都道府県地域医療対策センター(仮称)」を具体化することなどを提案(『「都道府県に研修先の調整機関を」、日医』を参照)。「医師の地域偏在と診療科偏在の解消には、私たち医師自らの決断と、具体的な行動が求められる。日医は医療界を主導して、偏在解消にまい進する」と中川副会長は語気を強めた。

 「不毛な議論に終止符を打つことが必要」

 代表質問で医学部新設問題について質問したのは、宮城県代議員の橋本省氏。宮城県知事や市長会などから医学部新設の動きがあることを指摘、さらには自民党の議連が医学部新設の方針を打ち出したことについて、「震災復興のためとされていることは、被災地の医療復興を目指して働いてきた者としては違和感を覚える」と問題視した(『医学部新設の推進を決議、自民議連』を参照)。

 宮城県医師会と東北6県医師会長は、今年2月に政府に対し、医学部新設に強く反対する要望書を提出したことを紹介。2008年度から2013年度までに医学部定員が1416人分増員されている現状などを踏まえ、橋本氏は「医学部新設により医師の粗製乱造が起き、医師の質の低下を招くことは絶対に避けなければいけない。医学部新設は、『百害あって一利なし』であることを国民に理解してもらい、不毛な議論に終止符を打つことが必要」と訴えた。橋本氏は「震災復興に名を借りた政治的な動きがあると危惧している」とも指摘した。

 これに対し、中川氏は、「全国の地域医療が崩壊の危機に陥った主な原因には、長期の医療費抑制と深刻な医師不足がある。医師不足には、医師の絶対数の不足と、地域間・診療科間の偏在による不足がある」と分析。「医師の絶対数の確保には、一定のメドが立った」とする理由として、20129月に厚生労働省と文部科学省が、「地域の医師確保対策2012」を出したことから、「医師の絶対数の不足については、医学部の新設ではなく、既存医学部の定員を増加させることで決着した」(中川氏)ことのほか、2008年度以降に医学部定員が1416人分増え、2025年の人口当たりの医師数は現在の1.4倍になる見込みであることなどを挙げた。

 さらに、医学部を新設しても、自立して診療を行える医師を養成するまでには10年かかること、また地域枠の卒業生が必ずしも地元に定着するわけではなく、地域枠で定員割れが生じているケースもあることなども指摘。

 「自民党の議連は、東北地方の市長会、宮城県知事らの要望を背景に、医学部新設を被災地復興のシンボルにしたいという意向だ。しかし、東北6県医師会長、被災地の3大学ともに、医学部新設に明確に反対を続けている。被災地の医療現場からこれだけ反対の声が上がっているのに、なぜ医学部を新設しようとする動きが止まることがないのか」(中川氏)。

 「医師過剰の状況を望んでいる人がいる」

 医学部新設については、奈良県代議員の塩見俊次氏が関連質問に立った。医学部新設を求める動きが続くことについて、塩見氏は、「日本の将来の医療をそうした形にしたいと考える、政治家あるいは財界の人の考えが裏にあるからだと考えている。(医学部を新設すれば)やがて遠くない時代に医師過剰時代がやってくる。医師過剰の状況を望んでいる人がいる。今、個別にこの問題に反対しても、なかなか受け入れられない。『日医は、自分たちの利益が減るから反対するのだろう』と、逆に言われかねない」との見方を示し、日本の医療の在り方を提示し、それを前提に反対運動を繰り広げていくことが必要だとした。

 中川副会長は、「医師不足の地域の住民が納得できる形」とは、将来的なビジョンも含めて提示して納得を得ることを意味すると説明。「医師の失業率は将来ともゼロを維持することが大事」とし、そのためにも「都道府県地域医療対策センター(仮称)」を機能させる必要性を改めて強調した。

 

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