総合診療医制度始まる

 

今回の検討会の報告書で、最も画期的かつ最大の成果は、総合診療医が基本領域の19番目の専門医として位置付けられたことです。名称については、「総合医」の方が良いと思っている委員もかなりおられましたが、医師会の委員の方が、「かかりつけ医、イコール総合医」という理由から、「総合医」と混同すると困るので「総合診療医」とするよう主張されました。(2012年後半に行われた)日本専門医制評価・認定機構の議論でも、「総合診療医」に落ち着いたので、この名称に決まりました。


高久史麿氏は、「総合診療医の必要数は、今後、総合診療医の紹介でスペシャリストを受診する体制が、どの程度整うかによる」と見る。

 ただし、「何年か経てば、総合医という名称に変わっていくのでは」と見る人もいます。第一に、その方が分かりやすいからです。また「総合診療医」の名称では、役割が診療に限られるイメージがあります。特にへき地や離島、またそれ以外の地域でも、診療だけでなく、学校保健や産業保健などにも携わり、行政などとの付き合いが必要になってきます。

――総合診療医の制度化は、先生が検討会の座長を引き受けられた際、実現すると考えておられましたか。

 私は、最初から基本領域の19番目の専門医として、総合診療医を入れるつもりでいました。私は、自治医科大学に長年籍を置いていました(編集部注:20123月まで、自治医大学長を務められた)。自治医大の卒業生は9年間の義務年限を終えた後、中には大学などに行き、専門医取得を目指す人もいますが、専門医資格がないままに診療を続けている医師も多い。今の専門医取得には、学会が決めた基準を満たす認定施設で研修を受ける必要があります。認定施設の多くは、規模が大きな施設であり、地方の診療所などで診療をしていると、専門医取得の条件を満たすことができません。しかし、実際には、自治医大の卒業生は、診療所や中小病院など、さまざまな施設で経験を積んでいるので、臨床がよくできます。彼らに与える専門医資格を考えると、総合医が一番良いと思います。

――名前にこだわるよりも、総合診療医の制度化を目指した。

 そうです。それが最大の収穫です。

――総合診療医の養成プログラムは今後の検討課題です。

 日本プライマリ・ケア連合学会のほか、内科、小児科、救急、さらには今後、高齢の患者さんが増えるので、整形外科など、さまざまな関連学会で養成プログラムを検討していくことになります。これから認知症の患者さんは急速に増える。その都度、精神科に紹介していたのでは、対応できないので、精神科も加えることが必要でしょう。総合診療医の守備範囲は広く、大変です。

 では、総合診療医になるための研修をどこで行うかですが、中小病院や診療所が中心になるでしょう。総合診療専門医の試験も、筆記試験などではなく、これらの研修施設でどんな患者を診たかという評価にウエイトが置かれるようになると思います。中小病院で医師が不足している地域では、ありとあらゆる患者さんを診ることになります。一方、大学病院で、専門診療科をローテーションしても、総合診療医の研修にはあまりなりません。つまり、総合診療医の養成は、結果的には地域の医師偏在解消に少しは役に立つと考えられます。

――総合診療医はどのくらいの数が必要だとお考えですか。検討会では、「10万人」などという数値も出ました。

 正確なところは良く分かりませんが、「総合診療は医師全体の30%くらい必要」と言われることもあります。結局、イギリスではGPGeneral Practitioner)が、米国ではfamily doctorがまず診ます。こうしたシステムがどの程度、日本に定着するかによるでしょう。この議論をすると、フリーアクセスを堅持すべきだと主張される方もいますが、本当にそれが良いのか。今後、総合診療医の紹介でスペシャリストを受診する体制がどの程度、整うかにより、総合診療医の必要数が決まってくると思います。

――どこまで進めるかは別として、先生としてはゲートキーパーを通して専門医を受診する体制がいいとお考えですか。

 患者さんにとっては、どこを受診して良いかが、なかなか分からない。信頼できる開業医がいれば、その医師を通して専門医を受診した方が良い。ただ、開業医がどれだけの実力を持っているかが分からないことがある。一定程度のトレーニングを受けて、一定のレベルが保証されている医師がいた方が、患者さんにとってメリットがある。医療経済的にも良いと思います。

 将来的には総合診療医がどこまで増えるかは、ちょっと分かりません。ただ、高齢者は、あちこちの診療科を回らざるを得ません。近くに総合診療医がいて、高血圧も糖尿病も、膝の痛みなども診てくれて、難しい疾患であれば、病院に紹介してくれる。こうしたことが地域の評判になれば、そこに患者さんが行くようになります。近い所で受診できる事は、とても便利なことです。

――国民がどの程度、総合診療医に期待するかにもよります。

 ただ、一般にはまだ、専門医の方が総合診療医よりも偉いというか、「上」だという認識があります。イギリスや米国でも同様のようです。例えば、米国ではfamily doctorの人気は高くはありません。次第にfamily doctorを選ぶ学生が減っている。給料がよく、かつ勤務時間がコントロールができる、麻酔や放射線科などのほか、心臓血管外科など給料が高いところに優秀な学生がいく傾向にあるようです。

 

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